雇用指標の向きが似て見えても、数えている人の集合は同じではありません。ミハルは分母を一つ補い、二つの指標を等号で結びません。
先に答え:同じ人々を数えた裏表ではない
有効求人倍率が上がれば労働需要の強さを示す材料にはなりますが、完全失業率が必ず同時に下がるわけではありません。有効求人倍率はハローワークの業務統計、完全失業率は世帯を対象にした労働力調査で作られます。分子も分母も対象者も違います。
ミハルが二枚のカードを裏表に貼ろうとすると、ハコが分母を表示します。片方は「有効求職者数」、もう片方は「労働力人口」。似た景気の矢印でも、同じ一枚のカードにはできません。
二つの式を並べる
有効求人倍率=有効求人数÷有効求職者数です。公共職業安定所が扱う求人と求職を基にし、新規学卒者など対象外の範囲もあります。「有効」は前月から繰り越されたものを含む一定期間の数で、「新規求人倍率」とも別です。
完全失業率=完全失業者÷労働力人口です。完全失業者は、仕事がなく、仕事があればすぐ就け、求職活動をしていた人。労働力人口は就業者と完全失業者の合計です。ハローワークを使っていなくても調査上の定義に該当すれば含まれます。
倍率1倍は、一人に一件の適職を意味しない
架空例で有効求人100件、有効求職者80人なら倍率は1.25倍です。しかし、求人がある地域、職種、賃金、勤務時間と求職者の希望が一致するとは限りません。一人が複数の求人に応募でき、求人一件が必ず一人の就職につながるわけでもありません。
倍率が上がったときは、求人が増えたのか、求職者が減ったのかを分けます。分母減少だけでも倍率は上がるため、「企業の採用意欲が一律に増えた」と即断しません。
失業率は労働力人口への出入りでも動く
完全失業者が就職すれば失業率は下がる方向です。一方、求職をやめて非労働力人口へ移った場合も、完全失業者と分母の両方から外れ、率が下がることがあります。反対に、仕事を探し始めた人が労働力人口に入れば、一時的に失業率が上がることもあります。
この流れがあるため、求人倍率と失業率は逆方向になり得ます。月次を比べるときは季節調整値か、全国か地域かもそろえます。
雇用の量と質は、別の統計で補う
求人倍率と失業率だけでは、賃金、労働時間、正規・非正規、希望との一致、就業の安定性までは分かりません。雇用者数や労働参加率とともに、賃金の購買力を見るなら「名目賃金と実質賃金」を確認します。経済全体の生産の動きは「GDPの前期比年率」という別の物差しです。
次の雇用ニュースで見る五行
- 新規求人倍率か有効求人倍率か
- 求人数と求職者数のどちらが動いたか
- 完全失業者数と労働力人口はどう動いたか
- 季節調整値か原数値か
- 全国、地域、職種のどの範囲か
二つの指標を合わせて読む価値はありますが、片方をもう片方の答えにしません。厚労省と総務省の元表へ戻り、それぞれの分母から読み始めます。
覚え方: 求人倍率は窓口の需給、失業率は人口の状態。