GDPの数字を正しく渡すには、経済学の全章を説明する必要はありません。ミハルは期間と公表段階を一行補い、四半期の実績と年率換算を分けます。
先に答え:年率8%は一年の実績とは限らない
四半期GDPの「前期比年率8%」は、その四半期と同じ伸びが次の三四半期にも続くと仮定して、一年分の尺度に換算した数字です。過去一年間にGDPが実際に8%増えたという意味ではありません。年率は四半期の速度を年単位に直した比較値、年間成長率は一年間の実績比較です。
ミハルが大きな「8%」だけを切り抜くと、トジが見出しの端から「前期比」「年率」「実質」「季節調整済み」を拾い戻します。GDPニュースは数字より、この四つの小さな札が意味を決めます。
前期比を四回複利にする
前期比を (q) とすると、前期比年率はおおむね (1+q)の4乗−1 で求めます。架空例で前期比2%なら、(1.02の4乗−1)は約8.2%です。単純な4倍に近く見えても、複利なので完全には一致しません。
この計算は「2%が今後も続く」という予測ではありません。異なる四半期の勢いを同じ一年尺度で比べる換算です。一四半期だけ大きく反動増したときは、年率表示も大きくなるため、元の前期比を必ず併記します。
前期比・前期比年率・前年同期比を分ける
前期比は直前の四半期との比較、前期比年率はその動きを年単位に換算した値、前年同期比は一年前の同じ四半期との比較です。それぞれ分母と期間が違うので、三つが同じ方向・同じ大きさになるとは限りません。
四半期どうしを比べる前期比では、季節要因をならした季節調整系列が使われます。前年同期比では原系列を見る場合があります。元表の列見出しまで残し、率だけを転記しません。
実質と名目は、物価変動の扱いが違う
名目GDPはその時点の価格で測り、実質GDPは物価変動の影響を調整して生産量の動きを捉えます。物価が上がれば、数量が同じでも名目額は増え得ます。したがって「GDP成長率」には実質か名目かを補います。指数の変化率と水準の違いは「CPIが下がると、物価も下がった?」にも共通します。
一次速報は、確定値の早出しではない
四半期GDPの一次速報は、早い段階で利用できる基礎統計から推計します。その後に資料が増えると二次速報で改定され、年次推計や基準改定でも過去系列が変わります。改定は単なる誤記訂正ではなく、統計がより多くの材料を取り込む通常の過程です。
数字が変わったときは、同じ公表回の新旧だけでなく、実質/名目、季節調整、前期比/年率が同じ列かを確認します。景気を雇用面から読む場合も、「求人倍率と失業率」のように異なる統計を同一視しないことが重要です。
次のGDPニュースで見る五行
- 一次速報、二次速報、年次推計のどれか
- 実質か名目か
- 季節調整系列か原系列か
- 前期比、前期比年率、前年同期比のどれか
- 消費・設備・在庫・外需のどの寄与が動いたか
年率だけで景気の強さを決めず、まず元の前期比と内訳へ戻ります。内閣府の統計表では公表日と速報の版も一緒に確認できます。
覚え方: GDPの年率は一年の実績ではなく、四半期の速度計。