賃金の額が上がり、購買力が下がることは両立します。ミハルは同じ期間の名目賃金と物価を並べ、矛盾という評価を外します。
先に答え:給与額が増えても、買える量は減り得る
名目賃金は金額ベースの賃金の動き、実質賃金はその賃金で買える財・サービスの量の変化を見る指標です。名目が増えても、同じ期間の物価がそれ以上に上がれば実質はマイナスになり得ます。
ミハルの「賃金の増え方と物価の増え方を、同じ期間で並べよう」が入口です。
実質賃金指数は、名目賃金指数を物価指数で調整する
考え方は「名目賃金指数 ÷ 物価指数」です。変化率が小さい範囲では、実質の伸びを「名目賃金の伸び−物価の伸び」で概算できますが、公式値は指数から計算されます。
架空例で名目賃金が2%増え、対応する物価が3%上がれば、購買力は概算で約1%減です。これは読み方の例で、実際の月の値ではありません。
先に、どの賃金系列かを確定する
毎月勤労統計には、現金給与総額、きまって支給する給与、所定内給与などがあります。賞与などを含むかで月ごとの動きは変わります。事業所規模、調査産業計、一般・パートの別、指数か金額かも確認します。
速報と確報で値が改訂されることもあります。違う系列や公表段階を並べて方向だけ比較しません。
次に、どの物価指数で実質化したかを見る
実質化に使う物価指数の系列を注記で確認します。CPIの上昇率と価格水準やコアCPIの除外範囲と同じく、「物価」という略称だけでは対象を確定できません。
実質賃金は統計上の平均的な購買力の動きで、個人の手取りや生活満足度そのものではありません。税・社会保険料、世帯人数、支出構成は別に考えます。
賃上げ率と実際の支給統計を混ぜない
春季交渉の賃上げ率は、対象企業の合意内容を集計した数字です。毎月勤労統計は調査対象事業所で実際に支払われた賃金を測ります。母集団、賃金項目、合意時点、支給に反映される時点が一致するとは限りません。
二つの数字を直接引く前に、対象、期間、賃金の定義をそろえます。政策金利やローン金利など別の家計負担も、実質賃金の定義には含まれません。
次の実質賃金ニュースで見る四行
- 現金給与総額・所定内給与など、どの賃金系列か
- 指数か金額か、前年同月比か別の期間か
- 実質化に使った物価指数は何か
- 対象事業所、速報・確報、改訂の有無
「給与が上がった」と「購買力が上がった」は別の主張です。同じ対象と期間の二系列を結んでから判断します。
覚え方: 賃金の増え方と、物価の増え方を同じ期間で比べる。